ミツバチロボットは地球を救う? ALifeが生んだ「ロボットスワーム」と新しいエコシステム

オーストリア・グラーツ大学 人工生命研究所で群知能を研究するトーマス・シュミクルは、スワームロボティクスの分野で生態系の真理を探究する。群知能は種族の壁を越えて意思疎通できるのか?それは崩れ行く生態系を守ることにつながるのか?環境危機が叫ばれるいま、彼は「ロボットの群れ」で地球を救おうとしている。

インタビュイー
トーマス・シュミクル

PROFILE

トーマスさんが人工生命の研究を始めた背景について教えてください。

およそ15年前に、EU主導の大規模プロジェクトの一環として始まりました。その狙いは、従来の常識を覆す革新的なゲームチェンジャーを確立することです。ある生物とそっくりで、なおかつ本物の生物に干渉できるロボットを生み出すこと。それは生態系の一部に同化することでもあります。1990年代には、多くの研究者がアリの群知能とアルゴリズムを模したロボットを生み出そうとしました。一方、私はミツバチの群知能を研究していたので、手始めにミツバチ型のロボットに着手しました。

オーストリア・グラーツ大学 人工生命研究所所長トーマス・シュミクル。

具体的に何をもって革新的とするのでしょうか?

当初、私の研究チームはあらゆる生物をモデルにした「ロボットスワーム」を構築する中で、究極の小型化こそがゲームチェンジャーになり得ると考えていました。しかし、小型化と改良を繰り返すうちに、自然界のアルゴリズムを模倣するだけではゲームチェンジャーとしては不十分であると考えるようになったのです。そこでロボットスワームを使って生態系、つまりは自然界と交信する方向へと舵をきりました。

どのようなアプローチで自然界と交信するのでしょうか?

ミツバチや魚といった群生物を模したロボットスワームを自然界に溶け込ませることで、生物の社会とロボットをリンクさせるのです。生態系におけるさまざまな生物の行動を忠実に再現したロボットたちは、それぞれの群れの一員として受け入れられます。こうしてロボットを仲間と認識した集団は、偽物であるロボットに対して本物の生物と同じように振る舞い、意思疎通を始めるというわけです。

トーマス率いるグラーツ大学 人工生命研究所が行う、ハチの群れに関する研究の様子。
PHOTOGRAPH COURTESY OF Artificial Life Lab Graz

そうして生態系に潜入する中で、新しい発見はありましたか?

最近の研究結果では、こうしたロボットスワームを使って異種生物間におけるコミュニケーションを確立することに成功しています。たとえば、ミツバチの群れに溶け込ませたロボットと魚の群れに溶け込ませたロボットをインターネットを介して接続することで、彼らはロボットスワームという通訳を挟んで、種の壁を越えて対話できるのです。

トーマス・シュミクル Thomas Schmickl

オーストリア・グラーツ大学 人工生命研究所で群知能を研究している。

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