仏教・パーマカルチャー・合気道──複雑な世界と対話をするための「ALife」という哲学

森林破壊、海洋汚染、温暖化──現代社会が直面するこれらの複雑な問題に対処するための鍵になるのはALife(人工生命)である、とALife研究者アレックス・ペンは語る。自然環境や社会をコントロールしようとするのではなく、それらのシステムを「生き物」と捉えることでその自然な在り方を優先する。合気道や仏教にも共通する「ALifeの哲学」はいま、英国の政策決定の現場でも実践され始めている。

インタビュイー
アレックス・ペン

PROFILE

最初にアレックスさんの経歴と、Artificial Life(ALife)の研究を始めたきっかけを教えてください。

もともと大学では物理学、主に天体物理学を研究していました。在学中に少し物足りなさを感じ始めたので、当時人気のあった生態系コンピューターモデリングの研究に移りました。進化型ロボットやハードウェアの模型をつくるのは、世界を探求しながら取り組めることが私には合っていました。

その後、ALifeを研究するためサセックス大学の進化適応システム科で修士号を、さらにEvolutionary and Adaptive Systems Group(EASY)で博士号も取得しました。EASYではアーティスト、哲学者、認知科学者、生物学者など多分野の人がクリエティブな環境で研究を行っていました。そこで進化型ロボットや生物学の哲学に触れ研究を始めました。

PHOTOGRAPH COURTESY OF ALIFE Lab. (BY-NC 3.0)

ALifeは日本でもまだあまり馴染みのない言葉です。「人工生命」と聞くと生命を人工的につくり出すのかという印象を受けますが、アレックスさんはALifeをどのように説明しますか?

ALifeとは、「システムを理解するために、システムを組み立てる」学問です。生命体や遺伝子の進化の過程を理解するために、コンピューター、ハードウェア、ロボットなどを使い「進化型システム」を組み立てます。

また、ALifeでは周りの世界を深く知るために、最低限の認知力(単純な目標に向かうという作用)と進化(個性化を維持しながら環境を通じて適応・変化をしていくこと)の性質を一からつくり出します。

そして、次のような哲学的質問を根本から問いかけます。

  • 生命体とは何か? 何が生命体になり得るのか?
  • 進化の可能性がある最小限の個体は何か?
  • アルゴリズム的観点から見た遺伝子とは何か?
  • 生命体、例えば人間、バクテリアバイオフィルム、蟻塚、都市などはどのような過程で出来上がるのか?

ALifeでは進化を原始的な視点から捉えます。生物学を物理的な枠に収めず、生体の過程は常に変化しながら進化していると捉えます。実際、生命体は種類が豊富で、真の生物ではないものもあれば、人間のように強い実体を持つものもいます。

前生物的な世界を理解するには、生命体や進化型システムについての既成概念を一度捨て、進化的、生物学的可能性を持つのに最小限なアルゴリズム的プロセスについて考える必要があります。

アレックス・ペン Alexandra Penn

アレックスは、サセックス大学で物理学と進化生態学を学び、コレギウムブダペスト高等研究所でのジュニアフェロー、サウサンプトン大学自然科学グループのライフサイエンスインターフェースフェローシップを歴任。彼女はまた、学問分野を超えて、政策立案者から産業家までと学際的な研究活動をしている。アレックスは、複雑系の研究者で、参加型の方法論と数学モデルを組み合わせて、利害関係者が、その複雑な人間関係におけるエコシステムを理解し、“操作“するためのツールを研究しています。サリー大学の研究員として、彼女は意思決定者が「産業生態系」の社会的、生態学的、経済的、政治的要因の間の相互依存性を調査するための参加型複雑性科学方法論を開発した。人工生命学会においては、国際社会におけるALife研究の影響を検討する理事会のメンバー。(出典: http://cress.soc.surrey.ac.uk/web/people/apenn)

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