仏教・パーマカルチャー・合気道──複雑な世界と対話をするための「ALife」という哲学

お話を伺っていると、ALifeの哲学は仏教の考えと似ているように感じます。人間は常に人生の流れを支配しようしますが、仏教は執着心を手放し、流れに身を任せて人生を生きた方が自然だという考えに基づいています。流れやサインを無視して自分のエゴの行きたいままに向かうと、間接的に抵抗やストレスが生まれます。逆にコントロールを手放して流れに身を任せた瞬間に、物事がいい方向に流れやすくなります。

まさに、そうです。同じようにALifeは「いま何が起きていて、自分にとってどのように役立つか?」を相互的に見て、システムが望むことを優先します。自分に役立つように少し手を加えたとしても、常にシステムが自分よりもっと強い勢いを持つことを意識し、それと共に働きます。そして、人生もエコシステムも、コントロールを手放した時に驚くようなことが起きるのです。

またそれは、手を加えるのを一度きりで終わらせないことも意味します。システムを理解するには、相互作用を続けなくてはいけません。例えば森林システムを管理する場合、土壌浸食を防ぎたいとします。その場合、例えば小さなダムをつくり、水が流れる方向を観察し、必要があれば方法を変える。認知力をフル稼働させ、庭師あるいは実験者の役割を担うのです。きっとこの方が、誰にとっても楽しいはずです。事実、変化は常に起きているし、すべてを把握することはできない。だから、ひとつの手段で対応するのではなく、常に相互作用を行うことが大事なのです。

アレックスが実施する政策デザインワークショップの様子。PHOTOGRAPH COURTESY OF ALEX PENN

ALifeの考えを政策に取り入れるにあたり、課題はありますか?

まずは一般市民にALifeの考えを受け入れてもらうことが大きな課題です。いまの世界では政策者が「複雑なシステムと共生していくための一番いい方法を、やりながら理解していきます。方向を間違える可能性や、予想外の結果が出る可能性が大いにあります」なんてことを言うのは難しいからです。

政府や社会のあり方について、政府内やメディアが常に目を光らせていますが、まだまだ世の中は「あらゆることはコントロールできるはずである」という考えが根強くあります。これからは、「予想外のことが起きると予想し、そのための準備を政策で進めていく」と言える環境が必要です。

また、人それぞれ社会から求めるものは違うので、意見が一致しないこともあります。政策を考える際に多方面、多分野の人の専門性を取り入れてALifeの哲学と組み合わせ、市民が中心となる参加型のシステムにしていくことが大事です。また、政策者は「この特効薬的な政策がすべてを解決する」などと言わず、あらゆる人の声を取り入れていかなくてはいけません。システムをコントロールできるという考えは不可能な上に、非道徳的なのです。

政策を考える際に多方面、多分野の人の専門性を取り入れてALifeの哲学と組み合わせ、複雑なシステムを議題の中心にしながら市民たちを巻き込んでいくことが大事です。政策者は「この特効薬的な政策がすべてを解決する」などと言わず、あらゆる人の声を取り入れていくことが大切です。システムをコントロールできるという考えは不可能な上に、非道徳的なのです。

たとえ政策者がひとつの特効薬的政策を打ち出したとしてもそれがうまくいくということは非常に稀ですから、社会の方でもALife的な考えを受け入れるための教育が必要になりますね。

そう、そして教育をするにしても抽象的にするのではなく、ALifeの哲学に基づいたツールが実際に市民自身の手に渡り、コミュニティや人生の一部となることが重要です。それは市民の地位を上げることにもつながります。

アレックス・ペン Alexandra Penn

アレックスは、サセックス大学で物理学と進化生態学を学び、コレギウムブダペスト高等研究所でのジュニアフェロー、サウサンプトン大学自然科学グループのライフサイエンスインターフェースフェローシップを歴任。彼女はまた、学問分野を超えて、政策立案者から産業家までと学際的な研究活動をしている。アレックスは、複雑系の研究者で、参加型の方法論と数学モデルを組み合わせて、利害関係者が、その複雑な人間関係におけるエコシステムを理解し、“操作“するためのツールを研究しています。サリー大学の研究員として、彼女は意思決定者が「産業生態系」の社会的、生態学的、経済的、政治的要因の間の相互依存性を調査するための参加型複雑性科学方法論を開発した。人工生命学会においては、国際社会におけるALife研究の影響を検討する理事会のメンバー。(出典: http://cress.soc.surrey.ac.uk/web/people/apenn)

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