/FEATURE/ RE-Thinking of natural living systems ~ ALIFE Lab.と見るこれから

これから展開される一連のISIDオープンイノベーションラボがALIFE Lab.とまとめた文章は、ALife研究を俯瞰するための歴史と各エキスパートたちの生命性の原理を明らかにするためのアプローチをまとめたものだ。ALife研究は、未来における新しい価値観をつくる可能性を持っている点で、とてもエキサイティングだといえる。多くの研究者たちが取り組んできた研究の社会応用は、まだ始まったばかりである。

インターネット上に存在する自身のデータが読み解かれた結果、その人に最適と思われる情報のみが提供されることで生まれるさまざまな影響のことは「フィルターバブル」と名付けられている。私たちには、「最適化」された選択肢しか存在しない環境が与えられているのかもしれない。

また、今社会で自動化が求められるのは、現時点での欲求・目的を満たすための効率性と継続的な安定性を充足させるためであることを物語っているのだろう。効率性や自動化が達成された時、私たちに新たに与えられた時間や余裕はどのように消化されるのだろうか。それとも、ひたすら効率性や自動化を追求していくのだろうか。そんな人間中心に最適化された世界の私たちではなくて、その先にある、人間の周辺にある人、地域、社会や環境からの情報とのインタラクションによって、知らず識らずのうちに出来上がっている私たちに出会ってみたい。ALife研究にはそんな私たちの世界を広げる可能性がある。

ALifeとは、自然の生命に特有の振る舞いを示す人工的なシステムを構築し、シミュレーションをすることで、生物を構成する物質そのものに留まらず、その背景にある生命の成り立ちや仕組みといった、生命現象の原理を明らかにしようという試みだ。「自律性」や「進化」などを生み出す「生命のOS」を見つけようとする活動であり、AI(人工知能)の限界を超える可能性を持つ研究領域として注目を集めている。

これから展開されるALIFE Lab.との共同研究は、多くの研究者たちが取り組んできたALife研究の社会応用を始めるプロジェクトである。
まずは、ALfe研究のエキスパートたちの生命性の原理を明らかにするためのアプローチをまとめて全体像を把握する。また、ALife研究のアプローチから、これからの社会に必要なサステナブルな環境の設計に取り組むためのワークショップを試験的に実施した。SF漫画というメディアを考古学的な手法で紐解き、ALife研究を未来形成の文脈に乗せる試みも紹介する。未来における新しい価値観をつくる可能性を持っているとてもエキサイティングなALife研究の社会応用を真剣に考える試みは、まだ始まったばかりである。

ALIFE Lab. について

複雑系科学/ALife研究者の池上高志氏(東京大学教授)、ウェブサイエンス研究者の岡瑞起氏(筑波大学准教授)、コンセプトデザイナー/社会彫刻家の青木竜太氏(ヴォロシティ株式会社代表取締役社長)が中心となって設立された、ALife研究者と他分野の研究者やアーティストとの共創促進を目的としたコミュニティです。本年9月に一般社団法人化し、企業との共同研究やクリエイターとの共同プロジェクトを実施しています。

Articles

Hisotry of ALife ; 人工生命はいかにして生まれたか?

13 Themes of Alife ; ALifeの基礎を知るための13テーマ (前編)

13 Themes of Alife ; ALifeの基礎を知るための13テーマ (後編)

Society As It Could Be ; ALifeがもたらしうる社会

創作小説 “The Two Agents ふたつのエージェント I. 世界の真実” / 小川哲

創作小説 “The Two Agents ふたつのエージェント II. ウシガエル” / 小川哲

AIだけじゃ「本当の知能」はわからない。ALifeの完成こそAI研究のゴールである

仏教・パーマカルチャー・合気道─複雑な世界と対話をするための「ALife」という哲学

これからの時代は”役に立たない”が役に立つ。ALifeと「終わらないもの」の可能性