13 Themes of Alife ; ALifeの基礎を知るための13テーマ (前編)

人工生命は極めて学際的な領域であり、一言に「ALife」といってもその研究対象やテーマは多岐にわたる。ALife研究にかかわる代表的な13のテーマを、 2014 年10 月に『Frontiers in Robotics and AI』に掲載された論文「The Past, Present, and Future of Artificial Life」から前編/後編に分けて紹介する。

Origins of Life/生命の起源

ALifeは常に、生命の起源を探求する科学者コミュニティと近い関係にあった。生命の起源には、自己生成や自己維持といった「代謝」から生命が始まったとする考えと、RNAのような「自己複製子」が生命を生んだと考え、自然淘汰による進化の始まりをその起源と見る大きく2 つのセオリーがある。近年ではそれら2 つを分類せずに「自律性」と「進化」の両方が生命誕生に必要だったとする考えや、「動き」や「適応行動」が重要な役割を果たしたとする議論もある。またこの領域に残る大きな課題として、「環境と相互作用する個体」が生まれる条件がいかにつくられたかを理解する必要がある。いずれにしても、生命の起源を考えるうえで避けては通れない問いは「生命の定義とは何か?」である。

Autonomy/自律性

自律性やオートポイエーシス(自己産出)も、ALifeに密接に関係するコンセプトだ。生物学者のウンベルト・マトゥラーナとフランシスコ・バレーラは、オートポイエーシスを「個体として自らの構成要素を生成する過程の、境界をもつネットワーク」と定義した。これまでその定義自体も議論の対象となってきたが、「生命体は単に自己組織化するだけでなく、代謝的かつ規則的な活動によって自らを生成・維持する能力を持たなければならない」という考えは広く共有されている。自律性をめぐる定義も科学者によって異なるが、ロボティクス分野においては、予め細かく設定された通りに動くのではなく、「自ら目的をもって行動する個体」であることが重要だと考えられている。

Self-Organization/自己組織化

自己組織化とは、複雑系研究者で医学者のロス・アシュビーによって「ローカルな相互作用が引き起こすグローバルなパターンや行動」と定義された現象であり、群れや渋滞が例として挙げられる。代表的なALife研究には、コンピューター上で雪の結晶を生成した「snowflakes」や、鳥型のデジタルオブジェクトに「分離・整列・結合」の行動ルールを与えるだけで群れを再現した「Boids」がある。また自己複製や自己維持、自己集合といった生命体・群における現象も、自己組織化のひとつといえる。近年では自己組織化に関する知見は、計算知能や認知科学、集団的知性、言語の進化に関する研究にも応用されている。

Ecology/生態学

ALifeにおける生態学研究とは、「個体がほかの種や環境といかにインタラクションを行うか」を調べる領域である。種同士の間で世代間にわたって起こる「共進化」は、生態学に関連する重要なテーマだ。コンピューター上で共進化を再現する研究が行われてきたほか、敵対的な関係にある種間で互いに生き残るためには進化を続けなければいけない「赤の女王仮説」も共進化に関わるトピックである。ほかにもALife における生態学研究は、共生、寄生、相利共生といった生物種間の関係を理解することに貢献している。地球規模ではバイオスフィア(生物圏)に関する研究も行われており、資源マネジメントや土地利用モデルの開発に応用することが可能である。

Adaptation/適応

適応とは「エージェントまたはシステムが、目的を果たすために環境に合わせて自らを変化させること」であり、生命体が生存し、自律的であるための重要な特徴である。伝統的なAIに対する代表的な批判には、それが予測能力は持つが適応能力を持たないことがある。またALife研究のなかには、AIに適応能力を付与しようとするものもある。いずれにしても適応能力と予測能力の両方が、自然/人工のエージェントにとって重要であるといえる。適応は、起こるスピードと時間軸の長さ、またその対象によって3 段階に分類できる。集団レベルで数世代の間にわたってゆっくり起こる「進化」、個体レベルで一個体のライフタイムのなかで起こる「成長」、さらに短い時間でより速く起こる「学習」である。

Evolution/進化

計算機科学で生まれた進化的アルゴリズムの目的は、経験に基づいて行われる従来の計算手法では解けない問題を解くこ  とだ。またデジタル生命の進化をシミュレーションすることは、ロバストネスや複雑性、突然変異といった生命システムの特  徴を理解することにも貢献している。

Development/発達

研究者たちは、細胞や動植物の発達をモデル化することで理解・応用しようとしてきた。近年では自然界の模様を生成 したり遺伝子調整ネットワークをビジュアライズしたりするソフ トウェアや、認知発達メカニズムを応用したコンピューテーショナルモデルも生まれている。

Learning/学習

学習とは経験に基づき自らの能力や行動を変化させることで あり、適応行動には欠かせない特徴といえる。こうした学習メカニズムや生物の脳神経構造のコンピュータープログラムへの応用は、ニューラルネットワーク、マシンラーニング、強化学習の誕生・発展に寄与している。